SINGLE
『満月の夕べ』

1. 満月の夕(ゆうべ)
2. 白い想い出
3. 満月の夕(ゆうべ) ~instrumental~
4. 白い想い出 ~instrumental~

recorded on 2002年10月

2003年 「満月の夕」が第45回日本レコード大賞企画賞を受賞する。
「四丁目の犬」を作った頃にNHKの「スタパでライブ」に出演したり、「公園通りで会いましょう」では井上順さんとの共演もあったりして、それがきっかけで小椋佳さんのミュージカル「ぶんざ」に出演することにもなりました。そんな風に新たな出会いも経験して、それに、しばらく中断していた人達とのディープな付き合いが再会されたりもしていて、全体を見回してみると、ちょっとどうなっていくのかと非常に怖かったりもするわけ。でも、この3回目か4回目の人生を生きている中で、歌うときの情熱は生活のどの場面よりも激しく思えるし、日常でも結構心騒ぐ日もあったりしてね、もっともっと私の歌を知らない方にも、子供からお年寄りまでどんな方にも、一人でも多くの方々に聴いて頂きたいと強く感じているのね。これからも全国の、多くの方々のもとへ飛んでいくわ。待っててください、もうすぐですから・・・。

幸せな出会い
酒井俊さんの歌に初めて出会ったのは1999年、新宿のピット・インでだった。俊さんのファンである友人に誘われてライブを聴きにいったのだ。正直にいうと、実はそれほど期待してはいなかった。薄っぺらな歌や歌い手を量産しているこの国の音楽事情にあきらめやいらだちを感じていたからだ。ライブハウスにいったところでいい歌が聞けるとは思わなかった。椅子に腰掛けてライブが始まるのを待っているとやがて客席の照明が落ち、黒っぽい衣装をまとった酒井俊がステージに現れた。ピアノやベースの演奏に続いて、柔らかなハスキーボイスが耳もとにすっと流れてきた。そのとたん、おやっと思った。
何だろう、この声は。この人は。これほど深みのある歌声をそれまで耳にしたことはなかった。
すぐそこで歌っているのに、果てしなく遠い場所から響いてくるような声。世界をあたたかく包み込むような声。私はいつのまにか身を乗り出して聴いていた。全身で酒井俊の歌を受けとめていた。

「満月の夕」は、中川敬さんと山口洋さんにより、阪神淡路大震災の直後に作られた歌だ。 俊さんはあるときこの歌に出会い、感動し、自分でも歌うようになった。以後七年間、俊さんは「満月の夕」をライブで歌い続けている。いつ聴いても何度聴いてもそのたびに心をゆさぶられるのは、俊さんが今もなおこの歌を愛し、持てる力を惜しみなく出しきって毎回歌っているからだろう。俊さんが歌うたび何度でも「満月の夕」は新しく誕生するのだ。「満月の夕」は、時代をこえて歌い継がれていくのにふさわしい、スケールの大きな歌である。俊さんの歌声を聴いているとそう確信せずにはいられない。酒井俊と「満月の夕」が出会ったことはどちらにとっても幸せだった。酒井俊を通して私たちがこの歌に出会えることも、とても大きな幸せだと思う。

詩人 平田俊子